当社のよくある質問⑥ 「摩耗部のめっき修理」について

当社のよくある質問についてブログにてご紹介しております。

今回は、「摩耗部のめっき修理」についてです。

世の中にはよく観察すると摩耗するポイントというものが沢山あります。

例えば、建設現場でよく見かけるショベルやクレーンはシャフト(細長い銀色の棒)を伸ばしたり縮ませたりして操作しています。この駆動部分は、何年も使用していると必ずこすれて消耗し安全上支障をきたします。消耗の具合は、擦り合わさる「材質」が重要なファクターとなります。なぜめっき屋であるYMCがこんな話をするかと言うと、摩耗するポイント(主に丸物製品)には当社が最も得意とする硬質クロムめっき(ハードクロムめっき)が必ずといっていいほど施してあるからです。硬質クロムめっきとは名前の通り、非常に「硬い」皮膜となり、ニッケルめっきのおよそ倍の硬さで製品を摩耗から保護します。乾式手法であるDLCコーティング等と比べるとその硬さは見劣りしますが、量産性の良い湿式によるめっき手法で①安価に生産/②硬い皮膜を得れる/③再生できるという点ではエコであり優れた処理となるのではないでしょうか。

今回の質問は以下の通りです。

Q.写真製品(図面無し/現品のみ)をハードクロムめっきで修正できますか?見積もりも併せてお願いします。

A.もの(サイズや形状)によりますが、基本的には修復可能です。基本工程は以下の通りです。

①現状のめっき剥離(機械又は化学的に剥離します)

②修復(材料の目立った打痕やキズは、機械加工やバフ研磨で目立たなくします)

③前研磨(表層に残すめっき膜厚分と希望寸法公差を考慮して前研磨します)

④ハードクロムめっき(狙い膜厚に応じて臨機応変にめっきします)

⑤後研磨(要求粗さ/寸法公差に応じてバフ又は円筒研磨で後研磨します)

傷打痕が深い/振れ幅が大きいものについてはなりに仕上げる事は可能ですが、プレス機器や溶接を駆使しての修復は当社単体では対応できません。新品同等をお求めの場合はご期待に添えない場合がございますのであらかじめご了承ください。修正品における見積もりについては、サイズを教えて頂ければある程度算出しますが、実際の請求については現品を確認してから別途協議とさせて頂いております。これは現品に振れがあったり、センター穴が欠損していたり見積もり時には分からないような不具合が多々ある可能性が高いからです。上記ご確認の上、修正品のご依頼は見積もり額~倍程度のご予算をお考え下さい。

硬質クロムめっきは他のめっき種とは少々趣が違い、つきまわりが悪く高電流を要します。上手に処理するには、適切な浴量と極比のバランスを勘案しなくてはなりません。当社は多能工化を推進しているので逆向した事を言ってしまいますが、マニュアル化が非常に難儀であり職人による勘や経験が生きる分野かと思います。簡単には習得できない技術に50年取り組んできたからこそ優位性があり、YMCが長年にわたって選ばれる一つの理由だと考えております。

生産設備としても大小4つの硬質クロムめっき槽を有しており、製品の特性に応じた槽を選定する事が可能で、フラッシュめっき(うす付けめっき)から100μm以上の厚付けめっき、他めっきとのコラボ、円筒研磨やバフ研磨を複合すれば多種多様なラインナップを抱えており、顧客要求に則した対応が可能です。

別件、

似たような処理で装飾クロムめっき(銅₋ニッケル‐クロムめっきorダブルニッケル‐クロムめっき※当社は前者工程を採用)がございますが、硬質クロムめっきとは要求される品質も処理工程も大きく異なります。こちらは文字通り装飾的な意味合いで施されるめっきであり、最終表面のクロムめっきは0.1~0.5μm程度しかついておりません。

また、当社に寄せられたご相談内容において、他社様でめっきされた製品において図面指示とは異なるめっきが納品されているケースがあるようです。製品安全上の観点からも図面指示に無い代替えめっきを行う場合、その機能についてエンドユーザー様と打ち合わせを行う事を推奨いたします。

(例:同じニッケルめっきでも電気めっきと無電解めっきでは得られる皮膜特性/機能性は違ってきます)

めっきに関しご不明な点がございましたら是非ワイ・エム・シーまでお問合せ下さい。

以上、当社のよくある質問⑥「摩耗部のめっき修理」についてでした。